新宿区東新宿・デイサービス施設に対し6000万円の立退料が認められた事案

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東京都新宿区、東新宿駅至近にある鉄筋コンクリート造9階建の建物。その一部を月81万6480円で借り、デイサービス施設を経営してきた借主。しかし、老朽化により建て替えるとして立退きを求めらました!裁判所が借主に6000万円の立退料を認めたポイントとは?

 裁判所が考慮した事実(東京地判平成21年2月27日) 

築約30年の建物で耐震構造にも問題があり老朽化が目立っていた

本件建物は、築約30年の建物で、エレベータの耐用年数が経過し、屋外階段に穴が開いているなど、老朽化が目立つ状況にありました。また、本件建物の耐震構造にも問題があり、これらの問題点をすべて修補すると、1億5000万ほどの費用がかかる状況にありました。これらのことから、裁判所は、本件建物の建替えの必要性があるものと判断したと思われます。

貸主は建替え目的で本件建物を購入

貸主は、本件建物で賃料収入を得るのでなく、本件建物を取壊した上で新築して利用する目的で、本件建物を購入しました。その際、本件建物に賃借人がいることを認識して購入しています。このことから、裁判所は、建替えの必要性はあるものの、貸主が本件建物を使用する利益は小さいものと判断しました。

借主の経営していた施設は移転が容易であった

借主の経営していたデイサービス施設は、その業態的に移転が困難なものではありませんでした。現に、借主は、本件建物の近隣でも、もう1件デイサービス施設を経営しており、このことからも、場所や建物に対するこだわりの少ない業種であるといえます。また、借主は、本件建物で20年間施設を運営することを前提に新宿区から1215万円の補助金を受け取っており、解約通知はその約5年後にされました。しかし、本件の立退きによっても、補助金を返還しなければならない状況とはいえませんでした。これらのことから、裁判所は、借主の移転が容易である旨の判断をしています。

裁判所は借主が受けていた東京都からの特例を考慮

借主は、上記のように、近隣に2つデイサービスの施設を有していたため、東京都指定の必要職員数のうちの2名を兼務することを認める特例を受けていました。そのため、借主が移転を余儀なくされると職員を新たに2名雇う必要がありました。しかし、裁判所は、貸主の側にも立退きを求める合理的な理由があるとして、この事情は、それほど重視されませんでした。

弁護士が解説する立退料算定のポイント

本件で特徴的なのは、立退料の算定において、貸主に多少有利な判断がされている点にあります。
立退料の算定に当たっては、①まず立退きの是非が判断され、②次に双方の利益の大きさが検討されます。その上で、③借家権価格や借主に実際に生じる損害等を考慮して立退料が確定する流れが一般的です。立退料算定の大まかな方針は②で既に決められることが多く、その方針によっては、③で検討される損害等があまり考慮されない場合もあります。

このことからわかるのは、たくさんの損害が生じる場合でも、貸主側の利益が大きく、借主側の利益が小さければ、その分考慮される事情が少なくなりうるということです。

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