世田谷区駒沢・薬局対し250万円の立退料が認められた事案

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東京都世田谷区駒沢にある軽量鉄骨造亜鉛メッキ鋼板葺2階建の建物。これを月16万5000円で借り、薬局を経営するために使用してきた借主。しかし、老朽化により建て替えるとして立退きを求められました!裁判所が借主に250万円の立退料を認めたポイントとは?

 裁判所が考慮した事実(東京地判平成22年5月14日) 

老朽化が激しく耐震性に問題があった

本件建物は、築30年の軽量鉄骨造亜鉛メッキ鋼板葺建物で、荒廃には至っていないものの、耐震性に問題があるなど、相当程度老朽化が進んでいる状況でした。裁判所は、この事実を貸主側の利益を強める事情として判断しています。

貸主の建て替え計画は具体的だった

貸主による建て替え計画は、近隣地区の容積率や建ぺい率に照らして、本件建物のある土地の利用方法として合理的なものでした。また、貸主は、杉並区のアパートを月11万円で借りて生活していましたが、本件建物の近くに住む貸主の両親が老齢で持病を持っており、貸主は建て替え後の建物を使用する予定でした。これらのことから、裁判所は、貸主の建て替え計画は具体的で、貸主が自己使用を望む合理的な理由がある旨の判断をしました。

借主と病院との提携関係は重要だった!

借主は、本件建物の近隣にある病院の院長の家族が設立した有限会社で、本件建物で約30年もの間薬局を経営してきました。このような経緯もあり、借主の薬局は上記病院の意向を踏まえて活動しており、また、その顧客の多くが上記病院の処方箋を持ってくる状況にありました。このことから、裁判所は、借主が上記病院近くの本件建物を使用する利益が大きい旨の判断をしました。

借主の移転は容易であった

上記のような事情があったものの、本件建物近辺で代替物件を探すことは困難ではありませんでした。このことは、借主の利益が小さいと判断される方向の事情として作用します。また、借主は、薬局を営む上で必要な機材を設置していました。この機材の移転は容易でしたがそれなりの費用が掛かる状況にありました。このことは、立退料の額を上げる事情として作用します。

弁護士が解説する立退料算定のポイント

本件で特徴的なのは、病院との連携が不可欠な薬局が借主となっている点にあります。薬局は、病院がなるべく近い徒歩圏内にある方が経営しやすいという特殊性があります。このような関係は、その密着度合い等は異なるものの、様々な業種で考えられ、温泉宿の近くの土産物屋や、海の近くの釣り具屋、大学近くの本屋や映画館近くのアミューズメント施設など、挙げはじめるときりがありません。このことからわかることは、自身の業態を取り巻く環境も重要な考慮要素になるということです。

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